アルバム「SHOWCASE」ライナーノーツ公開!
- 武器と勇気
■アルバムのオープニングを飾るこの曲の、Chase「Get It On」を思わせるようなファンキーなオープニングにまず驚かされる。
TOCのリリックも“自尊自立”といったタフでポジティヴなメッセージに貫かれている。
「僕自身、こういったファンキーなトラックでラップした事がほぼ無かったんで、新しい自分を引き出して貰えた、新しい自分を表現出来た曲になったと思いますね。例えばブルーノ・マーズが表現してるような、ポップなブラック・ミュージック・テイストのスゴく洒落たトラックだから、そういったトラックに自分が乗ることは、最初は想像もしてなかった。だけど新しい可能性を探る、チャレンジする、刺激を与える為にも興味があったし、実際に自分が乗ることでただ真似るんじゃなくて、“J-POP”のフィールドにグッと持って行くことが出来たと思う。今回のアルバムは“ポジティヴ”が大命題だったんで、それを象徴する曲になったと思うし、小難しい事を言うんじゃなくて、ストレートに、シンプルに、“当たって砕けろ!”っていうイメージが伝わると嬉しいですね」
02. リスキーダイス
■曲中に数々のギャンブル/ゲームが登場し、それを人生になぞらえた一曲。派手なビート感でライヴで盛り上がる曲になりそうだ。
「この曲のトラックを作ってくれたCHIVA(BUZZER BEATS)がプロデュースした、DJ下拓の“DISOBEY feat.TOC”が、ライヴでとにかく盛り上がる曲になっていて。それで、ライヴでバンバン跳ねられる曲を自分の音源でも作りたいって所から始まった曲ですね。だから完全にライヴ・チューンとして意識して書きました。ミュージシャンという道を選んだ事自体も、ギャンブルだなって。その意味でも、僕は自分の人生にBET(賭け)したしと思うし、そういうメッセージも込めて書いた曲です」
03. START UP feat.チアキ
■G-FUNK的な感触も感じるディスコティックなトラックに乗せて、“新たな始まり”をメッセージする。客演に参加したチアキは、元赤い公園のヴォーカル、佐藤千明。
「チアキにとって、この曲がソロに転向して最初の曲になるんですね。だから、『START UP』だし、そういった“新しい日々を作る”というメッセージで一曲作りたいというイメージは、彼女の方から投げかけられて。僕もソロとして新しく動く事を考えなければいけないと思ってた時だったんで、そのアイディアに乗って、そのメッセージで一曲作ってみようと。しかもこの曲では“第一章が終わりさ/二章はない”ってリリックで書いてるんですけど、続きじゃなくて、新たなスタートを表現したかった。彼女のメロディ・ラインも僕が考えたんですが、僕の音程のレンジよりも、彼女の持ってる音階のレンジが1.5倍ぐらい広くて、生粋のヴォーカリストはやっぱりスゴいなって勉強になりました。それにとにかく声がビックリするほどいい。地声に独特の“歪”があって、それが本当に素晴らしい声を生み出してると思いましたね」
04. 高嶺の花
■メロディアスかつバウンシーなビートに、高嶺の花への“届かぬ想い”を丁寧にしたためたラヴ・ソング。
男女共に共感できる曲だろう。
「今まで僕が書いてきたラヴ・ソングは、“俺についてこい!”みたいなタイプの内容が多かったんで、『高嶺の花』で書いたような、手が届かない女性に対する気持ち、恋い焦がれるような内容はあまり書いた事が無かったし、そういう設定で書いたらどうなるだろうって思ってチャレンジした一曲です。ちょっとキャラじゃないリリックでもあるから、書きながら怖い部分もあったんですけど、出来てみたらこれも自分の一側面だと感じましたね。自分の中にはこういったちょっと弱気な部分もあるから、それが出たのかなって。結果、スゴく面白い曲になったと思います。ライヴでも今までと違った演出が出来そうな気がしますね。曲を作った時に、舞台演出だったり、ステージングのイメージが浮かぶ曲は絶対いい曲になるから、この曲もライヴで楽しんで貰える自信が既にありますね」
05. 1999
■これまでのTOCのキャリアや地元である新潟を振り返りつつ、そこからいかに現在に辿り着いたかをセルフ・ボーストした一曲。
「こういったゴリッとしたヒップホップの感覚も自分の中の特性だと思うし、アルバムの中で一曲は、そういった部分を書きたかったんです。『1999』は、僕が人前でラップを始めた年で、そこからの歴史がこの曲のテーマです。その上でのストーリー形成上、昔の恨みつらみみたいな事も書いてるけどそこに重きは無くて、それよりも今の自分を100%誇るっていう気持ちを聴いて欲しいですね。“新潟”っていうワードは今まであまり使って来なかったんですけど、それをリフレインさせる事で強烈なパンチラインに出来たと思います。未だに僕は新潟に住んでるし、地場であり、新潟が僕の起点。それは表現したかったですね。リリックに出てくる新潟出身の元首相である田中角栄さんは、日本中に道を作ったけど、僕は僕しか作れない道を作ろうと思ってます」
06. 過呼吸
(メジャーデビューシングル 読売テレビ「脚本家と女刑事」主題歌)
■メジャー・デビュー曲。
歌、歌フロウ、ラップと、TOCの様々なヴォーカル・パターンが展開する部分も聴きどころだ。
「もう1年以上前のリリースになります。YouTubeで、この曲に自作のアニメーションを合わせた作品をアップした人がいて、その映像の方がオフィシャルのMVよりも再生数が多かったりしたんですよね。その動きやバズり方は、スゴく今っぽい感じを受けました。この曲は僕の得意とするような、“恋愛に溺れがちな依存型のダメ女、ダメ男の話”として読み取れるし、そこにフィールしてくれる人もやっぱり多いんだなって。すごく気に入ってる曲だし、ようやくアルバムに入れられて嬉しかったですね」
07. SAD DAY
■タイトル通り、失恋や別れをテーマにした、すれ違っていく2人の感情が情緒的に丁寧に描かれた別れ歌。
「『過呼吸』に続く曲として考えた曲ですね。ただ、『過呼吸』がインパクトの強い、振り回されるタイプの失恋の曲だとしたら、この曲は愛し合ってたはずの2人がすれ違っていくタイプの別れの曲にしようって。この曲のビートはヒップホップの名曲を下敷きにして作った曲なんですが、そういった誰もが知る曲をベースに、思い切り未練たらたらな失恋ソングを書こうと思ったんですよね。そうしたら『過呼吸』とのコントラストも含めて、最高の並びになりました。こういう未練を感じる恋愛ソングはTOCならではだと思うし、オリジナリティだと思ってます。それに、改めて振り返ると僕は明るい恋愛ってほとんどした事がない(笑)。この曲のエピソードになったようなホントに悪い思い出の方が多いし、それが今の作詞の糧にもなってますね。だから、そういう女性たちにも今では感謝ですね(笑)」
08. I’ll Light You
(読売テレビ・日本テレビ系 木曜ドラマF クリスマス スペシャル「眠れぬ真珠~まだ恋してもいいですか?~」主題歌)
■流麗なメロディに乗ったポジティヴな恋愛ソング。
恋人だけではなく、誰しもがもつ“大切な人”を思い描くようなメッセージにもなっている。
「ドラマの主題歌として、ドラマの台本を読んで描き下ろした曲です。ただ、完全にそこに寄せた訳では無いので、TOCの曲になってると思います。ドラマは陰にこもりがちな女性が、年下のイケメンに恋をするってる内容だったんですが、その女性はいつも黒い服ばっかり着てて、ネガティヴで、自分に自信も無いタイプなんですね。だけど、その闇の部分に光を当てようって部分から、この曲の“LIGHT”っていうテーマが浮かびました。闇に光を指してくれるのは、自分の周りの人だったり、関わってくれる人だと思うんですね。そうやって支えてくれる人がいるから前を向けると思うし、それは自分でもそうだった。だからこのアルバムは、聴いてくれた人が輝けるように、元気になれるように、美しくなれように、そんな作品にしたかったんですよね。闇を照らす為の光に俺がなるよ、っていうのがこの曲のメッセージでもあるし、その気持ちが、このアルバムを通してリスナーに届いて欲しいです」
09.NEW RULE feat.LITTLE
■KICK THE CAN CREWのLITTLEを迎え、韻やフロウなど、お互いのラップ・スキルを見せつけるようなド派手な一曲。
「LITTLEさんとは2013年ぐらいに初めて知り合って、ずっと“何か一緒にやりたい”っていう話はしてたんですね。それが今回やっと実現する運びになって。もしライヴにLITTLEさんに登場してもらうとしたら、渋く始まるより派手に盛り上がって、お互いにロング・ヴァースでバチバチに踏むまくるような、ラップ・スキルでぶつかるようなイメージが浮かんだので、そういう曲にしたかったんですよね。それで、3rd Productionに、EDM感のある、BPMもかなり速いタイプのトラックを作って貰いました。テーマとしては、タイトルにもある通り“新しいルール”ですね。時代のルールを作るのは俺達で、自分自身なんだって事を表現したかったし、もっと言えば“ルールとはなんだ”って深い部分まで、LITTLEさんと一緒に書きたかった。そうしたら、LITTLEさんは更にそこから、僕やリスナーへのメッセージや愛を込めたリリックを書いてくれたんですよね。時事や状況を折り込みながら、アートとして完成させるというのは、これぞヒップホップだと思ったし、本当に一緒に出来て嬉しかったですね