BIOGRAPHY
TOC
BIRTHDAY:1981.10.4
BLOOD TYPE:A
TOC(ティーオーシー)。Hilcrhymeのメンバーとして、ソロMCとして、そして自らが立ち上げたレーベル「DRESS RECORDS」のレーベル・ヘッドとしてなど、多角的な活動を展開する彼の物語は、地元である新潟から始まる。
1981年生まれの彼は、折しも00年付近に起こった「日本語ラップ・ブーム」の流れで、大学1年時に本格的にヒップホップに出会い、彼自身もラップへの道へ進み、マイクを握り始めた。そしてクラブ・イヴェントの開催やホストMCなど、いわゆる「現場」で活動を始め、イヴェント「熱帯夜」で出会っていたDJ KATSUと共にHilcrhymeを2006年に結成。その知名度と活動の幅を広げていく。
そして2009年に「純也と真菜実」でHilcrhymeとしてメジャー進出。そのメロディアスなラップ・スタイルとリリック構成の構築度の高さ、そしてポップ・センスが大きな話題を呼び、「春夏秋冬」や「大丈夫」など大ヒットを飛ばし、オリコン・トップ10入りや、楽曲トータル1000万ダウンロード越え、また各新人賞を総ナメにするなど、メジャー・フィールドにもしっかりと爪痕を残し、スターダムに登っていく事となる。
しかし、その活動に飽きたらず、DJ ISSAY aka Be DA BEATZ「HOOD FINEST REMIX feat. KEN THE 390, サイプレス上野, TOC, NYNJA」への客演参加をキッカケに、ソロとしての活動を展開。2013年10月に1stシングル「BirthDay/Atonement」、2014年11月にはソロとしての1stアルバム「IN PHASE」をリリースするに至る。
「IN PHASE」はある意味、Hilcrhymeファンにも、日本語ラップ・ファン(特に彼のスタンスに対して批判的だったリスナー)にも、大きな衝撃をもって迎えられた作品だったろう。
いわゆるHilcrhymeのTOC(トク)として表現されてきたメロディアスさやポップさ、ラヴ・ソングなどは作品では鳴りを潜め、「Swag in my skill」のようなハードなラップ・スタイルや、ZETTONやOHLD、DJ Mitsu the Beatsといったトラック・メイカー陣、そしてTwiGyやISH-ONEといった大ヴェテランから現場を沸かせているMCまで、いわば「コア」な側面、「TOC(ティーオーシー)としてのスタンス」が強く押し出された作品となっていた。また、Twitter上でTOCをディスしていたT.O.P.(THUGMINATI)との邂逅の末に生み出された「夜クライム」や、ヒップホップに対する愛憎とも言える感情を露わにした「Atonement」など、話題性の強い作品となった。
その後も、東京・大阪・名古屋・新潟の4都市で行われた初のソロ・ワンマン・ツアー「IN PHASE」の開催や、TOCのライヴDJを務める同郷のDJ松永(CreepyNuts)のソロ「サーカスメロディ」収録の「ミスターキャッチー feat. TOC」や、ウェッサイ系ラッパー:BIG RON「Last Call feat.TOC」への参加など、ソロとしての活躍の幅を広げていく。
2016年01月に2ndアルバム「SAFARI PARK」をリリース。福岡のハードコア・シーンを支えるSHITAKILI IXのプロデュースに加え、w-inds.、EXILE ATSUSHI、安室奈美恵などを手がけ、TOCの「IN PHASE」にも参加した福岡のトラック・メイカー:ZETTONをフル・プロデュースに迎えたこの作品。
TOC自身も製作中は福岡に居を移し、ZETTONとのマンツーマン、もしくはタイマンとも言える制作を行ったという。そしてそこで結実したアルバムは、TOC自身の政治的な意識や、シーンをサヴァイブするイズム、そして地元新潟への思いなど、TOC自身が剥き出しとなった、「抜身のTOC」という存在性を露わにした作品となった。事実、ジャケット写真でも彼のトレードマークであるサングラスを外し、彼の視線をしっかりとリスナーに向け、リスナーとも真っ向勝負を挑むような、タフな作品として完成した。
そして、その後に行われた「TOC LIVE TOUR 2016【SAFARI PARK】」のツアー・ファイナルとなった東京公演で、ソロMCとしてのTOC、及び彼が立ち上げた「DRESS RECORDS」がユニバーサルJとディールを結び、メジャーとして活動していくことが発表された。そして8月には、第一弾となるシングル「過呼吸」がリリースされる。
メジャー・フィールドでポップ・スター/ポップ・グループとしての存在感とアプローチを形にしたHilcrhyme、インディーズにおいてBボーイ・スタンス/ヒップホップ者としての自意識を強く押しだしたソロ。
その意味では、TOCとしてのソロ進出は、レーベル・ヘッド/プロデューサーとしての動きも含め、これまでに培われた2つの動きとは異なったスタンスで展開されていくことになるだろう。
そこでTOCがリスナーに見せる光とは一体どのような形になるのか。
興味は尽きない。
ライター:高木“JET”晋一郎